一般的に来客対応は、企業の総務や管理部が担当することがほとんどです。 しかし、いざ来客対応を担当することになった際、どうすればよいのかと不安に思うこともあるかもしれません。
そこでこの記事では、来客対応の流れや方法、実践で役立つチェック項目などを解説します。ミーティングや商談が上手くいくためにも、お客様に良い第一印象を持ってもらえる来客対応を心がけましょう。
基本的な来客対応の流れとは?
来客対応で失敗しないために、まずは全体像を掴みましょう。大まかな流れは、「準備」「受付」「ご案内」「お茶出し」「お見送り」です。ここでは、それぞれの流れと押さえていきたいポイントを詳しく説明します。
1. 準備
まず、使用される会議室の準備から始めましょう。以下の点に注意しながら、会議室を整えてください。
- テーブルや椅子は汚れておらず、整列されているか
- 以前部屋を使用していた人が使ったであろう灰皿やカップがないか
- 部屋の照明が切れていないか
- 空調はよく利くか
照明や空調の調子については、見落としがちなので注意が必要です。可能であれば来客が来る前に空調を調整し、適温に整えておくと良いでしょう。
2. 受付
お客様がいらしたら速やかに立ち上がり、「いらっしゃいませ」あるいは「こんにちは」と笑顔で挨拶をして迎えましょう。
次に、「失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」とお声がけし、お客様の会社名と氏名を伺います。お名前を伺ったあとは「株式会社〇〇の〜様ですね。」と復唱すると良いでしょう。このとき、聞き覚えのあるお名前なら「いつもお世話になっております」とお伝えする好印象です。
最後に、「恐れ入りますが、本日はどのようなご用件でしょうか」とアポイントの有無・ご用件を確認します。アポイントの確認が取れたら、会議室へご案内してください。
アポイントなしの訪問の場合は、担当者に確認を取りましょう。応対する場合はそのまま指定された会議室へお通しし、そうでない場合はお断りします。特にアポイントがない場合は焦ることもあるかもしれませんが、どちらのケースであっても丁寧な言葉遣いと対応を心がけてください。
3. ご案内
お客様をご案内するときは、「○階の会議室にご案内いたします」といったように、これからどこへ向かうのかを伝えると安心感を与えることができます。
お客様を誘導する際に気をつける点は、以下の通りです。
- 誘導者はお客様の2〜3歩左前を歩き、背中の正面を向けないようにする。エレベーターにはお客様より先に乗り、操作ボタンの前に立つ。お客様が乗り降りするときはドアが閉まらないように手で押さえ、乗っているときはお客様に背中を向けないように注意する。
- 階段を昇り降りする際は、お客様より自分が下にいるようにする。昇るときは自分があと、降りるときは自分が先に行くのがマナー。
会議室についたら、ドアをノックして中に入ります。中に人がいないと分かっているときも、ノックするのがマナーです。ドアが開いている際も、ノックして合図をしてください。
ドアが内開きなら「お先に失礼いたします」と伝えて自分が先に入り、ドアを押さえながらお客様の入室を促します。外開きの場合は、「どうぞお入りください」とお声がけしてお客様を先にお部屋の中に通したあとで自分が入りましょう。
お客様をお部屋に通したら、「こちらにお掛けください」と声がけし、上座に誘導します。「担当者が参りますので、少々お待ちくださいませ」と伝えたらご案内完了です。お部屋を退室する際は、「失礼いたします」とひと言添えて一礼すると好印象でしょう。
4. お茶出し
お客様をお部屋にご案内したら、ミーティング・商談に参加する人数分のお茶を入れます。実は、お茶出しにもいくつかのマナーがあります。ポイントを押さえ、失礼に当たらないようにしましょう。特に注意しておきたい点は以下の通りです。
- 夏は冷たいもの、冬は温かいものというように、季節に合わせてお茶の温度を調整する
- 茶碗と茶たくはお盆に別々にのせて運び、お茶を出すときにセットする
- お茶はお客様の右側後方から出す
- 書類などでお茶を置く場所がない場合は、自社の担当者に指示を仰ぐ(勝手に書類に触るのはNG)
- お茶はお客様(役職の高い順に)、自社の上司、部下の順で出す
お茶出しは、お客様にくつろいでいただくというおもてなしの意味があります。上記のほかにも、状況によって柔軟な対応が必要になるものです。
例えば、ミーティングや商談が長引いた場合は、60~120分を目処にお茶を変えるのが望ましいです。お茶と合わせてお菓子も出す場合は、先にお菓子、続いてお茶の順で提供するようにしましょう。お客様から見て左側にお菓子を、右側にお茶を並べます。
なかには、お客様にお土産をいただく場合もあるかもしれませんが、基本的にそれをお客様には出すのはNGです。ただし、生菓子などすぐに食べなくてはならないものの場合は、「お持たせで失礼ですが」という言葉を添えてお客様に出しても問題ないとされています。
5. お見送り
ミーティングや商談が終わってお客様が帰る場合は、お見送りを行います。場所や状況によってお見送りのマナーは異なるので、主なシーンとポイントを押さえておくと安心です。
オフィスがビルの上層階にある場合は、エレベーターの前までお見送りします。エレベーターのドアが開いたら、お客様に「本日はお忙しいなかご足労いただきありがとうございました。」などとお礼を伝え、エレベーターのドアが完全に閉まるまでお辞儀をしましょう。
オフィスが玄関に近い場合や、玄関までの行き道が複雑な場合は、玄関先までお見送りします。気持ちよく帰っていただけるよう、最後は笑顔で挨拶してください。雨や雪が降っているなど天気が悪いときは、「本日はお足元が悪いなかご足労いただきありがとうございます」とひと言添えると好印象です。
お客様の交通手段が徒歩でもタクシーでも、姿が見えなくなるまでお見送りしましょう。お客様が車でいらしていた場合は、車の前までお見送りします。お客様が車に乗り、ドアが閉まったタイミングでお辞儀をしましょう。玄関までお見送りするときと同様、車が見えなくなるまでお辞儀をするのがマナーです。
以上5つが、来客対応の一連の流れです。流れをつかんでおけば次に何をすべきかがわかるため、焦ることも減るでしょう。
来客に好印象を与えるには「ノンバーバルコミュニケーション」が鍵となる
一般的に、「第一印象は最初の15秒で決まる」ともいわれています。そのため、お客様が会社に入って一番初めにコミュニケーションすることとなる来客対応者は「会社の顔」であることを意識する必要があります。
では、何が第一印象を構成するのでしょうか。鍵を握るのは「ノンバーバルコミュニケーション(身振り手振りといった言語以外のコミュニケーション手法)」です。
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンによって発表された「メラビアンの法則」によると、人はコミュニケーションをとるとき、言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%の割合で、相手に影響を与えることが明らかになりました。つまり、言語と合わせて聴覚と視覚でのコミュニケーションにも気をつけると印象アップに繋がるのです。
ここでは、非言語コミュニケーションで気をつけると良いポイントを3つご紹介します。どれもすぐに実践できるものばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。
声のトーン (聴覚)
前述した「メラビアンの法則」で重要とされる聴覚情報には、声のトーンや話す速度などが含まれます。特に声のトーンは、高い場合と低い場合とで印象が大きく異なるものです。来社したお客様が明るい気持ちで過ごせるように、受付時の挨拶や会議室へのご案内の際などは高めのトーンで話すと良いでしょう。
笑顔 (視覚)
コミュニケーションにおいて、笑顔は非常に重要な要素です。会社を訪れる際、来客担当者が笑顔で接してくれると安心するでしょう。会社そのものへの好印象にもつながるかもしれません。受付やご案内でお客様と顔を合わせる際は、笑顔を意識してみてください。
身だしなみ (視覚)
来客対応は、比較的短時間でのコミュニケーションです。前述した「メラビアンの法則」でも、言語情報は視覚情報よりも影響する割合が高いことがわかっています。身だしなみが整っている人には、信頼や安心感を抱きやすいですよね。笑顔と同じように、会社への信頼や安心感にもつながるかもしれません。
例えば、以下のような点に気をつけると良いでしょう。
- スーツのサイズはちょうど良いか(ジャケットを閉めたときにシワがよらないように注意する。女性は体のラインが見えすぎないくらいのサイズ感がビジネスシーンにふさわしい。)
- スーツやシャツにシワや汚れがないか
- 靴のお手入れは行き届いているか(男性は革靴に汚れがないか、女性はヒールが削れていないかなど)
- 清潔感のある髪型か
- メイクは濃すぎず薄すぎないか
- ネイルは派手すぎないか
- 香水をつける場合、香りは強すぎないか
実践で役立つ「来客対応のチェック項目」を紹介
来客対応の流れや、好印象を与えるために気をつけるべきポイントを解説しました。とはいえ、「やることが多すぎてすべて網羅できそうにない」「最低限やるべきことをまとめたものが欲しい」という人もいるでしょう。
ここでは、実践で役立つ「来客対応のチェック項目」をまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
準備
□会議室は前の使用者のものや茶碗などが散らかっておらず、きれいな状態ですか
□換気は十分にできていますか
□ホワイトボードのインクは全部つきますか
□椅子は人数分ありますか
□プロジェクターやポインターの準備はできていますか
□部屋の照明は切れていませんか
□空調はよく利きますか/過ごしやすい温度に設定しましたか
受付
□笑顔で挨拶ができていますか
□お客様の会社名とお名前を伺いましたか
□事前のアポイントはありますか
ご案内
□廊下を歩くとき、お客様の2〜3歩左前を歩いていますか
□行き先を伝えながらご案内していますか
□エレベーターでは自分が操作ボタンの前に立ち、お客様が乗り降りされるときは手でドアを押さえていますか
□階段を昇るときは自分が後から、降りるときは自分が先にご案内できていますか
□会議室に入室する際、ドアをノックしていますか
□ドアが内開きの場合は自分が先に入り、ドアを押さえながらお客様の入室を促しましたか
□ドアが外開きの場合は、お客様を先にお部屋の中に通したあとで自分が入りましたか
□お客様は上座に誘導しましたか
お茶出し
□お茶の温度は季節に合わせて調整していますか
□人数分の茶碗と茶たくを用意し、お盆に別々にのせて運びましたか
□お茶はお客様の右側後方から出していますか
□書類などでお茶を置く場所がない場合は、自社の担当者に指示を仰いでいますか
□お茶は役職の高いお客様から順に出していますか
□ミーティングや商談が長引いた場合は、60~120分を目処にお茶を変えていますか
□先にお菓子、続いてお茶の順で提供していますか
□お客様からのお土産をそのまま出していませんか
お見送り
□エレベーターでお見送りする際、ドアが閉まるまでお辞儀していますか
□お客様はオフィスから玄関先まで不安なく行けますか
□最後に来訪のお礼を伝えられていますか
□玄関やお客様の車までお見送りする際、姿が見えなくなるまでお辞儀をしていますか
知っていると差がつく!上級者の来客対応
会社の代表として行う来客対応では、先に述べたチェック項目を実施できていれば十分です。しかし、これらは企業の来客担当であればできて当然のことともいえます。
来客対応ひとつで「この会社は違うな」と思わせられるように差別化できると、好印象を持ってもらえるはずです。ここではプラスαでできる工夫について紹介します。
快適な会議室づくり
お客様により快適な環境で過ごしてもらうために、会議室の環境を整えることは効果的です。
例えば、観葉植物がひとつあるだけで部屋の雰囲気は変わります。テーブルの上に可愛らしい置物があれば、緊張をほぐすきっかけになるかもしれません。季節のお花が飾ってあると、「隅々まで行き届いているな」と好印象を持ってもらえる可能性もあるでしょう。
会社のイメージに合わせた空間づくりができると、たった数時間のお客様の滞在がより素敵なものになるはずです。余裕がある場合は、ぜひ取り入れてみると良いでしょう。
ちょっとした気遣い
空間もコミュニケーションを形作る要素のひとつですが、ちょっとした気遣いも重要です。とはいっても、突然引き出しを増やすのは難しいことが予想されるので、普段から自分がされて嬉しかったことをメモするなどしておくと良いでしょう。
例えば、以下のような例があります。
- 雨の日に、「お足もとの悪いなかお越しいただきありがとうございます」
- 会議室に入室して、「暑くありませんか/ 寒くありませんか」
- 普段からお世話になっている方に、「今日のネクタイ、お似合いですね」
普段の来客対応に気遣いのひと言を付け加えるだけで、お客様に心地よく感じてもらえるのではないでしょうか。
来客対応をマスターしてお客様に好印象を与えよう
来客対応は企業によって多少違いはあるものの、一定の型があります。最低限、この記事で紹介した基本的な流れやポイントを押さえておけば、決して難しくはありません。来客担当者や企業に好印象を抱いてもらうためにも、正しいマナーを身につけて実践してみてください。