企業におけるスローガンは、「顧客や利用者(消費者)などの社外へ企業の価値観を発信したり、従業員一人ひとりの意識を高めたりする」という重要な役割を担っています。世間が企業に持つイメージへも影響するので、スローガンを作る際にはじっくり検討を重ねることが大切です。
こちらの記事では、企業スローガンが果たす役割や作成ポイントを中心に解説します。従業員にスローガンを浸透させるためのポイントも紹介するので、合わせてチェックしてみてください。
スローガンとは?
スローガンとは、企業や団体などがその組織の理念や主張、取り組みの目的などを簡潔なワードで表したもののことです。通常企業におけるスローガンでは、考えやビジョン、事業内容などを的確かつシンプルな標語や合言葉で表しています。記憶に残りやすい言葉や表現を活用するなど、各組織で工夫を凝らしているのです。
従業員のモチベーション維持や企業の今後の発展の観点から、今やスローガンを掲げることは必要不可欠でしょう。企業がスローガンを掲げることで、従業員が「どうしてこの会社で働いているか」「何のためにこの仕事をしているか」などが認識しやすくなり、各々のモチベーションアップにつながります。
また、企業のスローガンは、社内だけでなく社外の人へ向けて組織の理念やビジョンをアピールし、ブランドイメージを向上させるのにも効果的です。企業でスローガンを掲げる場合は、社内だけでなく社外への影響も合わせて考えながら決めていく必要性があります。
スローガンと類似する5つのワード
スローガンとよく似ており、混合されやすいワードは次の5つです。
- 企業理念
- モットー
- キャッチコピー
- タグライン
- クレド
それぞれ詳しく解説します。
企業理念
企業理念とは、「会社が事業を進めるうえで根幹となる考えや価値観」のことです。具体的には、「なぜこの会社が存在しているのか」「経営の目的とは何か」などといった考え方を指します。
会社の風土や方向性を従業員に伝達し、理解してもらうことで、組織内の意識が統一するのがメリットです。加えて、顧客や株主などのステークホルダーに示すことで、より良いブランドイメージを持ってもらえることもあります。
このあたりはスローガンと似たような役割を持っていますが、企業理念の大きな特徴は、「不変的かつ継続的であること」です。経営メンバーが変わっても、基本的に企業理念は変わりません。企業の肝となるものなので、長期で継続して使われていく傾向にあります。
モットー
モットーとは、「個人や組織の行動方針を表す言葉」です。イタリア語の「motto」が由来とされており、座右の銘や信条、信念といった言葉に言い換えられます。
企業説明や就職面接の場面でよく聞くという人も多いのではないでしょうか。スローガンが企業や団体の主義主張であるのに対し、モットーは「こうしたい」という行動指針です。よく似た言葉ではありますが、厳密には違いがあります。
キャッチコピー
キャッチコピーとは、「対象となる商品やサービスを魅力的に見せ、消費者の興味関心を高めるために使われる言葉」のことです。「宣伝文句」「コピー」と呼ばれることも。多少の幅はありますが、一般的に15字前後のフレーズになります。
電車広告やWeb広告はもちろん、自社サイトのトップページや公式SNSのプロフィールでもよく見かけるキャッチコピーは、消費社会といわれる現代において重要な役割を果たしているといえるでしょう。
スローガンは企業や団体の理念や主張、取り組みの目的などを表すことを目的としていますが、キャッチコピーは対象の商品・サービスを魅力的に見せるためのものなので、そもそもの目的や使用場面に明確な違いがあります。
タグライン
タグラインとは、「企業や商品・サービスが顧客に提供できる価値をわかりやすいワードで表現したもの」です。企業そのものを表現する一節としてよく使われており、企業のロゴマークや自社商品にも記載されています。
スローガンとタグラインの明確な違いは、その目的です。スローガンは社内・社外の双方に向けて組織の使命や取り組みが目指すところを示したものなので、主に消費者に向けて商品・サービスの価値をアピールするタグラインとは異なるといえるでしょう。
クレド
クレド(Credo)とは、ラテン語で約束や信条、志を意味する言葉です。企業においてクレドとは、「従業員が常日頃から心がけるべき行動指針」のこと。企業がクレドを掲げることで、従業員の人材育成およびエンゲージメント向上などにつながります。
クレドは従業員への浸透を目的としているのに対し、スローガンは社内および社外への周知を目的としています。よく似た言葉ではありますが、厳密には対象が異なると認識しておくと良いでしょう。
企業のスローガンが果たす役割
企業で定めたスローガンは、具体的にどのような役割を果たすのでしょうか。ここでは、主な3つの役割について解説します。
企業の認知度アップのきっかけとなる
企業のスローガンを掲げている場合、単に社名およびブランド名だけを文字化して提示するときよりも相手の興味を惹きやすくなります。スローガンがCMや企業サイト、SNSなどで繰り返し発信されることで、消費者やステークホルダーに認識されやすくなるでしょう。
このように、スローガンがきっかけで、企業の認知度が向上する可能性もあるのです。
ブランドイメージが構築できる
商品・サービスのロゴやメインカラーがその企業を想起させるように、スローガンも同様の役割を果たします。また、社名やブランド名とともにスローガンを掲げれば、競合との差別化を図ることも可能です。わかりやすい言葉を活用したスローガンで独自性を出し、それがヒットすれば、ブランドイメージ構築につながるでしょう。
そのため、スローガンはありきたりなものではなく、企業の個性を取り入れることが大切です。魅力的な企業だと印象付けるためにも、スローガンを作る際はよく検討しましょう。
従業員それぞれが自分の役割を認識するきっかけとなる
スローガンを掲げることで、従業員が各々の役割を改めて認識できるようになります。例えば「自分の普段の働きが、○○の形で世の中に貢献する」と捉えることができれば、モチベーションアップにもつながるでしょう
従業員一人ひとりにスローガンが浸透し、意識できるようになると、組織の一体感も生まれます。個人はもちろん、企業としてもポジティブな変化が得られるかもしれません。
「企業にとって良いスローガン」を作る際のポイント
良いスローガンを作るには、事前にポイントを押さえておくのがおすすめです。ここでは、下記7つのポイントについて解説します。
- テーマとターゲットを明確にする
- MVVに基づいている
- ブランディングとの一貫性を持たせる
- 利益だけを意識しすぎない
- わかりやすい表現やキャッチーな言い回しを使う
- 独自性を取り入れる
- 長期的に使えるものかどうか考える
テーマとターゲットを明確にする
企業のスローガンを作るときは、できる限りテーマとターゲットを明確にしてください。テーマを決める際は、一貫性を出すためにも、事業特性を考慮しながら決めることをおすすめします。ターゲットも合わせて明確化しておくと、より響くスローガンを作りやすいため、初めに決めておいて損はないでしょう。
MVVに基づいている
一般的に「良いスローガン」といわれるものは、MVV(Mission、Vision、Value/使命や企業理念、目標、価値観および強み)にきちんと基づいている傾向にあります。スローガンがありきたりかつぼやけた仕上がりにならないためにも、参考資料としてMVVの内容や決定プロセスなども知っておくと良いでしょう。
ブランディングとの一貫性を持たせる
スローガンは企業のアピール材料にもなるため、ブランディングとの関連性も考慮する必要があります。すでに企業として社内外のブランディングが確立している場合なら、スローガンを作る際に一貫性を持たせることを意識しましょう。
例えば、企業のイメージカラーやロゴがブルーなら、スローガンの文字をブルー系を選ぶ、エネルギー関連事業を売りにしているなら暖かさを感じるスローガンにするなどが考えられます。
利益だけを意識しすぎない
スローガンを作る際に意識しがちなのが、利益です。しかし、利益を追求しすぎると、利害関係のある人以外の目に止まることは難しいでしょう。かえって的外れなスローガンになる可能性もあるので、利益だけでなく社会的貢献などを含めた内容にしてみてください。
わかりやすい表現やキャッチーな言い回しを使う
わかりやすい言葉、あるいは惹きつけられるワードを用いたスローガンは、企業とユーザー・ステークホルダーとの距離を縮めます。
スローガンには多くの要素を組み込みたいと思うかもしれませんが、外に発信していくものである以上、関係者以外にもわかりやすいシンプルな表現を意識すると良いでしょう。ユーザーの不安や疑問、興味を予想し、惹きつけられる表現かどうか客観的に判断するのもポイントです。
独自性を取り入れる
スローガンを掲げるときは、独自性があるかどうかも考えましょう。競合他社と似たようなスローガンにしてしまうと、企業イメージもどこかぼんやりしたものになってしまいます。インパクトのあるスローガンにするためにも、他にはない自社の強みや独自のサービス・取り組みなどに着目し、差別化を図ることが大切です。
長期的に使えるものかどうか考える
一般的に、スローガンを毎年のように変えている企業はほとんどありません。あまり頻繁に変えてしまうと、自社のブランドイメージの確立が難しくなってしまいます。企業とスローガンをセットで周知し、印象付けるためにも、長期的に使える方向性の内容かどうか考えましょう。
従業員にスローガンを浸透させるポイント
従業員に向けてスローガンを浸透させるには、企業の担当者が何らかのアクションをしなければなりません。ここでは、定めたスローガンを効果的に浸透させる3つのポイントを解説します。
スローガンを定めた目的とプロセスとを明確にする
従業員にスローガンを発表する際は、それらを定めた目的とプロセスも一緒に共有することをおすすめします。なぜなら、背景を知ることでスローガンへの理解が深まったり、愛着が湧いたりするからです。
付け焼き刃のスローガンではないことも示せるため、企業としての本気度も伝わりやすくなります。経営メンバーや社長が自ら発表すると、社員も目を止めてくれる可能性が高まるでしょう。
社内報やチャットで定期的にアナウンスする
従業員全員にスローガンを知ってもらうには、一度きりのアナウンスだけでは少し不十分です。社内報に掲載したり、節目にチャットでアナウンスしたりし、定期的にスローガンに触れる機会を作ってみてください。
ただし、毎回同じ流れや構成で伝えるとマンネリ化してしまう可能性のあるので、必要に応じて変化を持たせることをおすすめします。社内報のテーマや事業に紐付けた内容にすると、一貫性も出るでしょう。
スローガンに紐づいた社内イベントを開催する
アナウンスするだけでなく、スローガンに紐づいたイベントを開催するのもおすすめです。例えば、定例のなかで従業員がスローガンについてディスカッションする時間を設けたり、スローガン関連のクイズを社内表彰の場で実施するなどが挙げられます。
従業員それぞれがスローガンについて考える機会を作ることで、より理解が深まるでしょう。
参考にしたい!スローガンの企業事例
ここでは、参考になるスローガンの企業事例を紹介します。作成に迷った際のヒントにしてみてください。
事業の特性と目指すところを端的に表現|四国石油株式会社
四国石油株式会社のスローガンは、エネルギーに関するすべての困りごとを提案し、地域社会や人々の心をつなぐことで、あったかい家庭・職場を作りたいという思いのもと作成されました。事業の特性をよく捉えたスローガンといえるでしょう。
(参照:四国石油株式会社「会社概要(https://www.yonseki.jp/overview.html#slogan)」、参照日:2024/05/09)
社内外に目を向けて印象に残るスローガンをつくろう
従業員やステークホルダー、消費者の印象に残る企業スローガンを策定するときは、テーマやターゲットだけでなく、MVVやブランディングの観点も留意する必要があります。また、他との差別化を図るためにも、事業の独自性を取り入れることも大切です。
スローガンには従業員のモチベーションをアップさせる効果もあるので、うまく浸透できれば「この会社を自分たちの手で良くしたい」という意識が組織全体に芽生えるかもしれません。
加えて、スローガンは企業の認知度向上やブランドイメージの構築にも効果的です。多くの人にとって魅力的なスローガンを作れるよう、こちらの記事を参考に考えてみてはいかがでしょうか。