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介護離職とは?実態と企業ができる対策を紹介

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家族の介護をするために従業員が勤めている企業を離職してしまう「介護離職」の増加が、ひとつの社会問題になっているのはご存知でしょうか。従業員が仕事と介護を両立できず、離職を選んでしまうのは企業としては避けたいところです。

本記事では、介護離職の現状や背景、従業員が介護と仕事を両立するために活用できる制度などについて解説します。

介護離職とは?

介護離職とは、従業員が、家族の介護と仕事の両立が難しくなり、介護のために退職していくことを指します。ほとんどの場合は、自身や配偶者の親が高齢となり介護が必要となる40~50代の従業員で、介護離職が発生します。

介護離職者は離職によって経済的に苦しい状況に陥ることも懸念され、また、一日中介護と向き合うことで精神的にも追い詰められかねません。企業にとっても、経験を積んだ働き盛りの中堅社員が離職してしまうのは大きな損失です。

少子高齢化に伴い、今後ますます介護離職者が増えると予測されます。介護をしながら働く従業員の離職をいかに防止するかは、社会全体がかかえる緊迫した問題と言えるでしょう。

介護と仕事を両立している人へのアンケート調査結果

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」 (平成24年度厚生労働省委託調査)から、実際の「介護と仕事の両立」の様子を読み取ってみましょう。

働きながら介護する40代・50代の割合は10人に1人

調査によると、正社員として就労する人のうち、「介護を担っている」と答えた人は、40代で9.8%、50代で15.4%と、40代以上になるとおおよそ1割前後の人が親の介護をしながら仕事をしていることがわかります。

役職に就きながら介護する人が女性は6割以上

介護しながら正社員として就労している人のうち、役職を持たない一般社員の割合は、男性では39.6%、女性では65.4%です。係長・主任クラス以上の役職を持ちながら親の介護にもかかわっている人の割合が決して少なくないことが伺えます。

過半数以上が仕事との両立に不安を感じる

介護しながら就業している人のうち、「仕事と介護の両立」に「非常に不安を感じる」または「不安を感じる」を選択した人は、男女ともに7割を超えています。

具体的な不安の内容としては、「自分の仕事を代わってくれる人がいないこと」の割合が33.5%と高く、次いで「介護休業制度等の両立支援制度を利用すると収入が減ること」「介護休業制度等の両立支援制度がないこと」という内容が続きます。企業側ができるはずの業務や制度周知に関するサポートが十分に足りていないのかもしれません。

介護離職の実態とは?

実際に介護離職をする人の総数や、そのような人の離職後の実態はどのようになっているのでしょうか。

介護離職した人の総数

5年ごとに調査され、総務省が公表している「平成29年就業構造基本調査結果」によると、介護をしている人は約628万人で、そのうち平成28年10月から平成29年9月の1年間に前職を「介護・看護のため」に離職した人は約9.9万人となっています。そのうち男性が2万4千人、女性が7万5千人と、女性が8割を占めているのも特徴的です。

この調査の前である平成24年の調査結果では、同様の理由での離職者は約10.1万人です。5年間で若干の減少は見られるものの、年間10万人前後の人が介護のために早期退職しているという状況は変わりません。

介護離職者は離職後に負担が増えている

介護離職者は、離職によって収入源が絶たれてしまいます。高齢の親の介護で離職した場合、介護中は親の年金などを頼って生活が可能ではありますが、仮に看取りの時や、費用のかかる介護サービスが必要となった場合に、離職してしまったことを後悔してしまう事態になりそうです。

経済的な面だけではなく、介護生活で社会から孤立したことで、精神的にも負担が増加したと感じる人も少なくありません。

仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」によると、離職後に「負担が増した」「非常に負担が増した」と感じている人の割合は、精神面・肉体面・経済面、いずれも5割を超えています。「少しでも楽になりたい」という思いで離職したとしても、実際は離職後に負担が増えたと感じる人が多いのが現状です。

介護離職者の再就職率は低い水準のまま

平成29年就業構造基本調査結果によると、前職を離職したものの、その後新たに就職した有業者は約2万5千人、一方で無業者は約7万5千人と、無職でいる人のほうが圧倒的に多いことがわかります。離職後の再就職率はかなり低いと考えるのが良いでしょう。

大和総研「介護離職の現状と課題」資料で介護離職者の再就職状況を年代別に見ると、40代が53%、50代が38%、60代が18%となっています。年齢が上がるほど再就職が難しくなるので、離職している期間が長引けば長引くほど正規社員に復帰することは困難になると言えるでしょう。

介護離職が増えている背景

介護離職が増えている背景には、両立することへの体力的な困難さが挙げられます。日中フルタイムで企業に勤務し、帰宅後は家族を介護する状況が続くと、どんどん疲れが蓄積し、「仕事を辞めて、介護に専念すれば少しは楽になるのでは?」と感じてしまいます。

また、育児・介護休業法の制定によって、介護を行う社員への介護休業・休暇が認められるようになった一方で、40代〜50代の重要なポジションに就く年代の従業員が制度を利用することに躊躇してしまう場合も少なくありません。「制度を利用したことで、社内での立場が悪くなってしまうのでは?」と頭を悩ませる人もいるでしょう。

そのような日本の会社組織の慣習もあり、制度を適切に利用できず、やむなく介護離職をする人も数多くいるのが現状でしょう。

介護離職を防止するために利用できる国の制度

介護と仕事を両立するための支援制度には、下記のようなものが挙げられます。

介護休業法

国では、「育児・介護休業法」を制定して、仕事と介護の両立を支援しています。介護休業制度とは、けがや病気、身体または精神上の障害などで要介護状態の家族1人につき3回、通算で93日間の休業ができる制度です。

介護休業の対象となる家族の範囲

・配偶者
・父母
・子
・配偶者の父母
・祖父母
・兄弟姉妹
・孫

ただし、祖父母、兄弟姉妹、孫の場合は同居かつ扶養状態にあることが条件です。また、その家族が常時介護を2週間以上必要な状態にあることも条件のひとつです。

介護休暇制度

介護休暇とは、家族1人につき、年間5日まで休暇を取得できる制度のことです。家族の介護や、病院への付き添いなどの世話を行う際に活用できます。申請方法は企業ごとに違いがあります。

介護休暇を取得する権利は法律で守られています。そのため、取得の申し出あった場合に事業主がそれを拒否することや、これを理由に当該従業員を解雇したり減給したりなど不利な対応を行なうことは禁じられています。

介護休業給付金

介護休業給付金とは、要介護状態の家族のために介護休業を取得した際、その期間中に従業員が受け取れる給付金を指します。支給額は基本的に「日額賃金×休業日数×67%」で計算されます。

条件として、家族の常時介護が2週間以上であることや、従業員が雇用保険の被保険者であること、職場復帰を前提とした介護休業を取得していることが挙げられます。従業員が休業中に会社から80%以上の給与をもらっていたり、入社してすぐの場合であったりする際には受給ができません。

申請方法

まず、介護休業開始時に、「休業開始時賃金月額証明書」を事業所を管轄しているハローワークに申請します。これは、介護休業開始時の翌日から10日以内に提出する必要があります。

給付金の申請は同じくハローワークに「介護休業給付金支給申請書」を提出します。介護休業終了の翌日から2カ月後の月末までに申請を行う必要があります。
いずれの申請も、企業を通してハローワークで行うものとなりますので、忘れないよう注意してください。

長時間労働や深夜労働の制限

企業は、要介護状態の家族を介護する従業員から請求があった場合に、所定外労働や時間外労働、深夜労働などを制限する必要があります。

1回の請求につき、法定時間外労働を1ヵ月で24時間かつ1年で150日までに制限することや、深夜労働を禁止することが可能になります。請求回数に制限はありませんが、場合によっては対象外になることもありますので、事前に要件を確認しておきましょう。

従業員が介護を理由に離職を選ぶ理由

「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」 での調査報告によると、離職理由として最も多くを占めているのは、「仕事と『手助け・介護』の両立が難しい職場だった」というもので、男性(62.1%)、女性(62.7%)と6割以上を占めています。仕事と介護の両立の難しさが数字上でも伺える結果です。

そのほか、
・自分の心身の健康状態が悪化したため 男性(25.3%)、女性(32.8%)
・自身の希望として「手助け・介護」に専念したかったため 男性(20.2%)、女性(22.8%)
と続いています。

介護離職を防ぐために企業ができること

従業員の介護離職を防ぐため、企業はどのような準備ができるかをまとめました。

社内に専用の相談窓口を設ける

コンプライアンス上、社内に相談窓口を設けている企業は多いでしょうが、育児や介護などは従業員の私生活に関わる内容のため、なかなか相談しにくいものです。

育児・介護に関する相談窓口を設けることで、従業員の相談するハードルを下げ、気軽に困りごとを共有できる環境を作れます。相談された内容に応じてスムーズに福祉制度を案内できるようにしておきましょう。

従業員のメンタルヘルスケアに力を入れる

「介護を理由に離職を選ぶ理由」として「両立が難しかった」「心身の状態が悪化した」が上位を占めていることからもわかるように、本来は仕事から離れて休息するはずの自宅で介護に追われることは、従業員の心身の健康に多大な影響を及ぼします。

介護を行う従業員の心のケアが適切に行えるよう、相談体制を整え、場合によっては産業医との面談を定期的に設定することも検討しましょう。

テレワークを推進する

テレワークが進むことで従業員が自宅からも業務に携われるようになれば、介護を行いながら仕事を続けやすくなります。介護を続けたい従業員にとっては、勤務先がテレワークが可能かどうかは、離職を検討するかどうかの分水嶺になると言っても過言ではないでしょう。

時短勤務制度を周知する

育児・介護休業法では、一定の要件を満たした従業員が短時間勤務を希望した場合、それに応じるか代替措置を取る必要があります。通常であれば8時間程度の所定勤務時間を、時短勤務制度下では6時間以内とするケースがよく見られます。この制度を周知し、要件に当てはまる従業員には積極的に利用してもらいましょう。

福利厚生で従業員の介護をサポートする

自社独自の介護休暇制度や、家族の施設入居優遇制度など、介護離職を防止する独自の福利厚生を設ける企業も増えてきています。40代〜50代の中堅社員が多い企業は、優秀な社員の介護離職を防ぐためにも、より充実した福利厚生を用意することをおすすめします。

保険や福祉支援などの介護制度を案内する

介護休業法や休暇制度など、国が制度を用意していても、従業員自身がそれを知らない可能性があります。定期的にケアマネージャーによる勉強会を開いたり、社内報で周知するなど、制度の存在を知らせて利用を促すとよいでしょう。

働き続けられる環境作りに力を入れる

制度づくりや、相談体制の構築も含め、たとえ家族の介護を行っていたとしても働き続けられるような企業風土を作っていくことが求められます。経営者層が積極的に従業員に働きかけ、安心して介護と業務を両立できるような環境づくりを心がけましょう。

働き続けられる環境づくりを多角的に行うことが重要

現在の日本社会では、少子高齢化に伴った労働力不足が叫ばれています。従業員がどのような状況に置かれたとしても自社に残り長く働き続けられる環境を作ることは、企業を成長させていくためには必要不可欠です。

リテンションマネジメントが今後重要になっていく

リテンションマネジメントは、人材が企業に定着し、活躍するためのマネジメント手法のひとつです。リテンションは「維持・引き留め」を意味しており、リテンションマネジメントとは従業員が自社で長い間働き続けるようにするための考え方と言ってもいいでしょう。

ひとつの職場に長くとどまり安心して働き続けることは従業員にとっても良いことですし、従業員が離職しないでいてくれることは企業にもメリットがあります。従業員が定着する企業になるには、長く働き続けられるような環境作りが不可欠です。

介護離職を防ぐこともそのひとつと考えられるでしょう。介護を理由に退職してしまう従業員を一人でも減らすため、企業として最大限工夫し、努力していくことが求められています。

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執筆者 Writer

おかんの給湯室編集部

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