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労働生産性とは?向上のための取り組みと効果の計測方法

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2021/07/02


働き方改革により、長時間労働の是正が進んでいます。同時に、いかに限られた時間内で成果を出すか、労働生産性の向上も組織が直面する課題のひとつです。

労働生産性は、「従業員がパフォーマンスを発揮する」といった漠然としたイメージではなく、定量的な数値で求められます。正しい意味と計算方法、労働生産性向上につながる取り組みについて紹介します。

労働生産性とは

労働生産性とは、労働者1人当たり、もしくは労働1時間当たりでどれだけ成果を生み出したかを示すものです。生産性についての研究を行う公益財団法人日本生産性本部によれば、労働生産性を「労働投入量1単位辺りの産出量・産出額」と定義しています。

労働生産性は、「労働投入量(インプット)と産出量・額(アウトプット)の比率」で決まります。インプットに対してアウトプットが大きい場合は、「生産性が高い」となり、インプットに対してアウトプットが小さい場合は、「生産性が低い」と言われます。

労働投入量には、成果を生み出すのにかかった労働者数や労働時間が入ります。これまでと同じ労働量でより多くの成果を創り出す、または、これまでより少ない労働量でより多くの成果を創り出したとき、「労働生産性が向上した」となります。

労働生産性の2つの種類

労働生産性には、「物理労働生産性」と「付加価値労働生産性」2つの種類があります。

物理労働生産性

物理労働生産性(物的生産性)とは、成果物の大きさ・重さ・個数など「物量」を単位として測る場合に用いられます。工場などの生産現場で生産効率を求めるときに適した指標です。

付加価値労働生産性

付加価値労働生産性とは、労働によって「新しく生み出された金額」を単位とする指標です。生産額から経費や原価などを差し引いた売上総利益をもとにして算出されます。

国ごとの労働生産性を比較する場合には、付加価値労働生産性が用いられます。代表的な例では、GDPが付加価値労働生産性です。

労働生産性の測定方法

労働生産性を測定する基本の式は、以下のものです。

求めたい労働生産性の種類に合わせて、適した分子と分母を当てはめます。

物理労働生産性では、分子に個数や物量といった「生産量」を当てはめます。対して、付加価値労働生産性では、分子に「付加価値額」を用います。分母には、1人当たりの労働生産性を求める場合は「労働者数」を、1時間あたりの労働生産性を求める場合には「労働者数×労働時間」を用います。

このとき、付加価値額を計算するには「控除法」か「加算法」のどちらかを使用します。控除法とは、シンプルな計算式で「売上高-売上原価」で求められます。

加算法の場合は、自社が生み出した価値を足していきます。「経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課」という計算式で算出されます。

日本の労働生産性の現状

ここで、「労働生産性が低い」と言われがちな日本の現状をみてみましょう。

国際比較での順位は低迷

・日本の 1 人当たり労働生産性は、81,183 ドル。OECD 加盟 37 カ国中 26 位。
・日本の時間当たり労働生産性は、47.9 ドル。OECD 加盟 37 カ国中 21 位。

国際比較では、2019年の日本の労働者一人当たりの労働生産性はOECD加盟37ヵ国中26位です。名目労働生産性ベースでは、前年度比+3.4%と上昇したものの、1990年の15位をピークに、日本の順位は低迷が続いています。

出典:P4『労働生産性の国際比較 2020』(公益財団法人日本生産性本部)

1時間当たりの労働生産性は、37ヵ国中21位です。こちらも名目労働生産性は5.7%上昇していますが、日本の順位は1980年の19位を最高に、それ以降は20位前後に留まっています。

出典:P9『労働生産性の国際比較 2020』(公益財団法人日本生産性本部)

日本の労働生産性が低い理由

背景の一つに、、国内の就業者数の増加があります。2019年の平均就業者数は前年比で60万人増加しました。1人当たりの労働生産性は、分母である労働者数が少なくなるほど高く算出されます。労働生産性を計測するうえで、就業人数の増加が不利に働いているといえます。

時間当たりの労働生産性については、効率化への遅れが一因となっています。諸外国と比較して長時間労働のイメージが強い日本ですが、2019年の年間平均労働時間は10年ぶりに2000時間を割り込んでおり、カナダとほぼ同程度。働き方改革の施策の効果が数値に表れてきています。

しかし、産業構造が比較的日本と近いドイツは、時間当たり労働生産性は56%も高く、年間平均労働時間1,386時間という、より短い労働時間で高い生産性を維持しています。無駄を省き、効率化を追求する動きが労働生産性の高い国では徹底されています。

日本の労働生産性の見通し

国内の1人あたり労働生産性の推移に目を向けてみると、2011年度の786万円を底に緩やかに回復しています。労働生産性の上昇は、企業が新たな利益を生み出すことであり、賃金アップにもつながるものです。しかし、諸外国と比較して伸び率が高いとはいえず、2020年に入ってからは、企業の人件費負担にも関係する単位労働コストが上昇しています。

成果を出すための労働コストが上昇すれば、企業は商品やサービスの値上げを迫られます。人件費負担を減らすための従業員削減を行うかもしれません。さらに2020年は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、国内就業者数は48万人減と、8年ぶりに減少しています。今後公表される労働生産性には、コロナ禍の影響が反映され、厳しい数値になることも予想されます。

国内の業界・業種ごとの特徴

国内の産業別に付加価値労働生産性をみてみると、不動産業、電気・ガス・水道、金融・保険業が高く、農林水産業や宿泊・飲食サービス業などの人手を必要とする産業の生産性が低くなってます。

出典:『主要産業の労働生産性水準の推移』公益財団法人日本生産性本部

公益財団法人日本生産性本部が公表している「日本の労働生産性の動向2020」によれば、2019年度の物理労働生産性は、16産業中12の分野で上昇しています。

労働生産性上昇率がプラスだった業界

・運輸業
・郵便業
・物品賃貸業
・事業者関連サービス
・医療・福祉等

労働生産性上昇率がマイナスだった業界

・建設業
・製造業
・飲食店
・小売業

労働生産性上昇率がプラスであった業界は、業務の効率化による残業の減少が労働生産性向上につながっています。物品賃貸業では、コロナ禍によるIT機器リース需要の高まりが労働生産性向上を後押ししました。

一方で、マイナスとなっているのが建設業、製造業、飲食店、小売業です。とくに飲食店・小売業は2020年1月期~3月期に新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、売上が低下しています。ただし、インプットにあたる労働時間も営業自粛などの影響を受けて減少しており、結果として生産性の大幅な低下が抑えられています。

出典:P14『日本の労働生産性の動向2020』公益財団法人日本生産性本部

企業規模ごとの特徴

では、企業規模による労働生産性にはどんな特徴があるのでしょうか。

中小企業庁が公開している資料をみると、生産性の中央値は企業規模が大きくなるほど高くなります。大企業の中央値は小規模企業の約3倍です。ただし、小規模企業上位10%の生産性は大企業の中央値を上回っており、規模が小さくても高い生産性を挙げている企業があることがわかります。

出典:第1-2-5図 企業規模別の労働生産性の比較

業種別の軸を掛け合わせてみた場合でも、基本的には企業規模が大きい大企業ほど労働生産性が高くなります。

出典:第1-2-7図 企業規模別・業種別の労働生産性

中小企業は労働によって生み出した付加価値を、人件費など労働者に分配する割合が高い状況です。かつ、付加価値に占める営業純利益の割合は、大企業と比較して少なくなります。ここから言えるのは、企業規模が小さいほど、労働者への給与アップなどの利益還元と、事業拡大のための投資活動のバランスをとるのが難しいということです。

中小企業が国内の労働力に占める割合は、約7割に上ります。中小企業の労働生産性の向上が、日本全体の労働生産性に影響を与えるといえます。、

労働生産性を向上させるために企業ができる8つの取組み

労働生産性を向上させるのは、「より利益を生み出すサービスや商品の開発」「1人のパフォーマンスを最大化させる取り組み」「時間あたりのパフォーマンスを最大化させる取り組み」などがポイントです。ここでは、、労働生産性向上のため、企業ができる8つの取り組みについて紹介します。

1,競争戦略を見直す

同じ労働人数や同じ労働時間で、生み出す付加価値=営業純利益が大きくなれば労働生産性の向上につながります。

中小企業が営業利益率を高くするには、特定のターゲットに向けて価格以外の点で差別化を図る「差別化集中戦略」が有効です。

地域に特化した事業展開や、競合が少ない海外地域への進出、顧客の細かいニーズに応える対応など競争戦略の見直しが労働生産性向上に貢献します。

多様な働き方を尊重する

短い労働時間で、大きなパフォーマンスを発揮してもらうには、適材適所の考え方が大切です。従業員が持っているスキルをヒアリングし、活かせる配置を検討します。

また、在宅勤務や時短勤務など多様な働き方を用意することは、様々なスキルを有する人材を社内に定着させることにつながります。通勤時間がない在宅勤務は、時間的・体力的コストの削減により業務を効率化できます。

モチベーションアップのための制度設計

1人当たりのパフォーマンスを上げるには、仕事へのモチベーションが鍵になります。モチベーションアップに影響するのが、評価制度です。仕事の成果を公平に評価されたという実感が、達成感や満足感につながり、仕事へのやる気を維持します。

上司と部下の1on1面談を設けたり、360度評価を実施したり、公平なフィードバック・評価制度を構築しましょう。

従業員のスキルアップを支援する

従業員のスキルアップは、高いパフォーマンスの維持には欠かせません。とくに、技術の変化が早い情報通信業などでは、従業員へのスキルアップ支援と業務の成果が密接に関連しているといえます。

従業員が業務に必要な知識を常に最新状態にアップできるよう、セミナー参加費用に補助を支給したり、社内研修を実施したりしましょう。

業務の可視化

業務習慣が見える化されることで、分析が可能になります。課題を発見し改善する第一歩となるのが、業務の可視化です。

スケジュール管理ツールやタスク管理ツールなどを用いて、従業員がどの仕事を行っているのかチームで共有しましょう。また、リモートワークなど物理的に離れて業務をするスタイルは、仕事のブラックボックス化に拍車をかけます。

こうした状況では、専門ソフトの分析機能を用いて、従業員のパソコンの使用状況を確認することが有効です。「会議時間が多い」「会議中、メール返信など別の作業に気を取られている」「ミーティングが多く、業務が中断してしまう」など、業務の無駄を発見できます。

チャットツールなどのITツールの活用

チャットツールを導入すると、チーム内や複数人でのコミュニケーションが可視化され、情報共有がスムーズになります。受信を基準とする電子メールとは異なり、通知で「関係ある会話」を見逃さないため、膨大なやりとりのなかから重要なお知らせをキャッチできるようになります。時間的コストに優れたテキストコミュニケーションで、伝達ミスなどを削減できます。

さらに、属人的に行っていた作業を自動化するITツールもあります。近年では、RPA(Robotic Process Automation)のように、ツールを用いて定型作業を自動化してくれるものが注目されています。在庫情報の確認や交通費の経費精算など、さまざまな業務で省力化が可能です。

また、チャットボットのように顧客の問い合わせに対して自動で応答する仕組みもあります。膨大なデータに基づいたやり取りで、省力化だけでなく売上向上も期待できます。

ペーパーレス化

デジタルデータへの移行は、「プリントアウトする」という作業時間を削減します。たとえば、近年ではクラウドサイン等を活用した雇用契約書の締結で、契約書のペーパーレス化も進んでいます。遠隔にいる相手でも電子メールで締結完了するため、印刷・郵送にかかる時間および費用を削減できます。

このような小さな積み重ねが、現場の効率を上げ労働生産性向上につながります。

業務のアウトソーシング化

アウトソーシングの活用も、チームや部署の労働生産性向上に有効な施策です。

業務には企業活動の根幹をなす「コア業務」と、業務自体は利益を生まないもののコア業務遂行に欠かせないサポートを行う「ノンコア業務」があります。全社は、営業やマーケティング等を指し、非定型な業務フロー・複雑な判断・創造性などが特徴です。

一方、ノンコア業務は定型的であり、外部サービスの活用が比較的容易です。さらに社外の専門家に任せることで、内製するよりもよりクオリティの高い成果を期待できるという面もあります。

アウトソーシングを行うことで、業務の人材確保の心配がなくなります。ノンコア業務が安定稼働しているため、従業員はコア業務により集中でき、付加価値を生み出す仕事を担えます。

ABWをすすめる

ABW(Activity Based Working)とは、従業員一人ひとりが仕事内容に応じて働く場所や時間を自由に選ぶ働き方のことです。

固定席を設けず、仕事の内容によって使用するデスクを選ぶ点が特徴です。そのほか、オフィスに「仕事を集中して行う」「リラックスして打ち合わせをする」など、目的に合わせたスペースを設置し、より効率的に働ける職場環境をつくります。

たとえば、ハウス食品グループの大阪本社の事例では「適業適所」というコンセプトで、仕事にあった空間がデザインされています。

フリーアドレスのように働く席が自由に選べるだけでなく、レイアウト変更が柔軟といったように、働く人の生産性向上に重きが置かれています。

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生産性向上施策の効果の測り方

生産性向上のための取り組みを実行したあとは、その効果を測定します。その際、自社の課題にあわせた具体的な指標を設定することが有効です。主に用いられる指標には以下のものがあります。

労働時間の減少の目安となる指標

・残業時間
・年間総労働時間削減できた作業工数時間
・年次有給休暇取得率
・付加価値を測定する指標
・1人あたりの売上高
・コストの削減率

長時間労働を見直し、残業時間を減らしたり有給取得率を上げたりすることは、従業員のモチベーションアップにつながります。労働生産性が向上するだけでなく、働きやすい職場として人材の定着や採用力強化も見込めます。

労働生産性をあげるために「働き方改革」に取り組もう

労働生産性を上げるためには、限られた時間内で成果を出す省力化・効率化の取り組みがポイントです。働き方改革ですすめられる、長時間労働是正のための残業時間削減や業務フローの見直し、テレワークの拡大やITツールの導入は、労働生産性向上に貢献します。

適切な労働時間で、最大限の成果を発揮できるような、制度構築や環境づくりに取り組みましょう。

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執筆者 Writer

おかんの給湯室編集部

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