利益を上げる目的で、従業員に無理をさせてはいませんか。従業員が健康で働いてくれて初めて企業の利益が上がります。そのため、従業員の健康増進に努めることが企業の利益につながるという「健康経営®︎」の考え方に切り替えていきましょう。
この記事では、健康経営の取り組み方がよくわからない人のために、健康経営の基本や実践によるメリット、健康経営を成功に導くポイントなどを紹介します。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
健康経営とは何か
健康経営とは、1992年にアメリカの心理学者ロバート・H・ローゼンが自身の著書によって提唱した概念です。従業員の健康管理を企業が取り組むべき経営上の問題と捉え、積極的に健康増進への取り組みを行っていく経営手法のことをいいます。
企業が個々の従業員の健康に配慮することで、職場環境の改善を実施すれば、従業員の健康は多少なりとも増進されるはずです。企業の健康に対する取り組みが従業員の健康増進につながれば、それぞれがベストな状態で最高のパフォーマンスを発揮することができるでしょう。
従業員がそれぞれの持てる力を最高の状態で発揮できれば、生産性の向上につながるはずだというのが、健康経営の根本的な考え方です。この概念は、日本でも2009年頃から広まりを見せています。
健康経営が求められる背景
健康経営という考えが広まりを見せていることには、当然のことながら従業員の健康悪化が経営上のさまざまな問題を引き起こしているという背景があります。ここからは、健康経営が求められるようになった背景を3点紹介します。
人口減少による働き手不足
人生100年時代となり高齢者像が大きく変化していく中で、減少が著しいといわれる日本の労働人口。厚生労働省の「令和2年版厚生労働白書」では、今後ますます少子化が進み、本格的な人口減少による働き手の不足が慢性化することが懸念されています。
働きたい人が働き続けられる環境の整備や、働く人々のポテンシャルを引き出し発揮させることができるような社会の確立が、これからの日本社会における喫緊の課題であると考えられています。
出典:「第1章 平成の30年間と、2040年にかけての社会の変容 第1節 高齢化の伸びの鈍化と人口減少」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/19/dl/1-01.pdf)(2023年10月26日に利用)
社員の心むしばむ企業内の風習
古くから企業で当然のように行われてきたことが、実は従業員の健康を損ねる原因になっている場合がいくつかあります。気付かずに行われていることの多くは、メンタルヘルスに大きな影響を与え、うつ病など心の病の発症につながることも少なくありません。
ブラック企業の存在
従業員に無理を強いる形で業務を遂行させ、利益を上げる企業は、一般的にブラック企業と呼ばれています。
ブラック企業という呼び方は比較的新しいものですが、精神的に圧力をかけ、従業員に無理をさせるという点に関しては、古くから日本にあった働き方であるようにも感じます。特に、終身雇用が当たり前だったかつての日本では、会社のために身を粉にして働くことが求められていた部分もあり、企業側も従業員の側も、無理を強いる働き方だと感じることなく行っていた可能性があります。
個人の権利やプライベートと仕事の両立などを考えるようになったからこそ、苦痛に感じられ、心の病につながるケースが増えたのかもしれません。
ブラック企業の問題の一つに、メンタルヘルスが悪化することにより、従業員本人の判断力が著しく落ちることがあります。そのような経営を続けることは、生産性の低下や離職率の上昇を招くため、企業にとってもプラスになることはほとんどないと考えられます。
ワンオペレーションでの業務
本来なら複数で分担して行うべき作業を、1人で行わなければならない状態が「ワンオペレーション業務」です。この裏には、人件費削減という問題が隠れています。
本来1人で行う作業ではないので、体力的にも精神的にも負担がかかります。無理して作業を続けることで、健康を損なう結果に繋がりやすくなるのが大きな問題点の一つです。注意力が落ちている状態では、ケガもしやすいうえに、生産性もダウンします。
メンタル面が悪化すれば、休業や離職にもつながるでしょう。そうなれば、結局代わりの人員を準備することになり、コストを省いた意味もなくなってしまうため、企業にとってもマイナスが大きいといえます。
長時間のサービス残業
長時間のサービス残業も、日本の企業で古くから行われてきたことの1つです。企業が利益を上げるため、本来の就業時間外に長時間働き続けるように促すことで、十分な休息を取れずに健康を害することにつながります。
肉体的な疲れ、精神的な疲れが溜まった状態での作業では、パフォーマンスが低下するものです。ベストな状態でパフォーマンスを発揮し作業効率を上げることで、就業時間内に業務を終わらせられる環境を整える方が企業にとってもメリットがあると気付く必要があります。
健康保険の赤字による企業負担の増加
従業員が健康を損ねるということは、健康保険の赤字を増やすことにもつながります。
健康保険の赤字割合は増加している状態で、増加した分は企業が負担しなくてはならないということを忘れてはいけません。どれだけ会社が利益を上げたとしても、従業員の健康を犠牲にした利益だとしたら、健康保険の赤字はさらにふくらんでいきます。健康状態が悪い従業員が増えれば、その分、医療機関に通う従業員が増えるということです。
医療機関に通う従業員が増えれば増えるほど、健康保険の支払いが増え、企業の負担も増加するということをきちんと理解することが大事です。
日本国内における健康経営への取り組みと各方面の評価
健康経営という概念は、日本で広がり始めてから年月がそれほど経っていません。
そのため、どのような効果があるのかはもちろん、概念そのものを知らない人もまだまだ多いのが現状です。ここからは、現在日本国内において健康経営はどのような取り組みが行われているのか、また各方面から健康経営がどのように評価されているのかを解説します。
国による健康経営の推進
日本再興戦略、未来投資戦略を推し進める政府の立場としては、「国民の健康寿命の延伸」は重要な取り組みの1つです。そのためにも「健康経営」という考え方を広め、取り入れていく動きを加速させています。
そこで、経済産業省が主導による健康経営の推進が始まりました。健康経営を実践する優良企業の表彰制度にも力を入れ、2014年には東京証券取引所とともに健康経営銘柄を選定し、2016年には健康経営優良法人認定制度が創設されました。
健康経営銘柄とは、東京証券取引所の上場企業から、特に優れた健康経営を実践している企業を選定するもので、経済産業省、東京証券取引所が選定します。2023年には、31業種49社が健康経営銘柄に選定されました。
健康経営優良法人認定制度は、健康経営に取り組む医療法人等を、上場、未上場に関わらず認定する制度です。2023年は、大規模法人部門では2,676法人が、中小規模法人部門では14,012法人がそれぞれ認定されました。
出典:「「健康経営銘柄2023」に49社を選定しました!」(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230308003/20230308003.html)(2023年10月27日に利用)
出典:「「健康経営優良法人2023」認定法人が決定しました!(経済産業省)(https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230308002/20230308002.html)(2023年10月27日に利用)
健康経営に対する国内外からの評価の高まり
健康経営を行っても、メリットを実感できるようになるまでには時間が必要です。実際に、健康経営のメリットはすぐには実感しづらいという声が少なくありません。そのため、健康経営を導入した企業の中には、健康経営のメリットを実感できるデータを収集し始める企業があります。
経済産業省が出す資料から、特に大手企業を中心に、健康経営を始めたことが収益にどのような影響をもたらしたかを調査し、レポートを作成したり、健康経営についての民間評価制度を創設したりする動きがみられるようになりました。また、健康経営をビジネスモデルに位置づけた企業が、国内外で評価を受けるケースも出ています。
投資の世界では、国内、国外を問わず、投資家の投資判断に健康経営が組み入れるようになってきました。健康経営が企業の利益向上につながるとみるのが、投資家の間では一般的になったという証拠です。
経済産業省では、自らが実施している健康経営度調査のデータを学術利用できる体制を整備しています。国内外の各方面で、健康経営を評価する向きが加速していることがうかがえるといってよいでしょう。
出典:「健康経営の推進について(経済産業省)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/sankankyougikai/healthcare/dai2/siryou2.pdf)(2023年10月27日に利用)
健康経営のメリット
メリットをすぐには実感しづらいといわれる健康経営ですが、長期的に考えると実感できる点はいろいろあります。ここからは、個人や企業が実感できる健康経営のメリットとはどのようなものなのか、具体的なメリットを企業側と従業員側の二つの側面から説明します。
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【企業側メリット①】労働生産性のアップ
従業員が健康に働ける状態と、不健康な状態での生産性を比較すれば、健康な場合の方が高くなることは明らかです。そのため、従業員の健康促進に関する取り組みが労働生産性アップにつながることを実感するのは、それほど難しいことではありません。
従業員が受ける健康診断の費用を企業が負担すれば、健康診断の受診率が上がり、病気を早期発見することができます。病気も軽いうちに見つかればその分早く治り、生産性に与える影響も最小限で済むでしょう。
ストレスチェックの実施やフレックスタイム制の導入など、肉体的、精神的なストレスを軽減する取り組みも有効です。企業主導で従業員の健康管理を図ることによって、従業員の健康を増進させれば、労働生産性を向上することができます。
【企業側メリット②】リスクや医療費負担の軽減
健康経営により従業員の健康が増進されると、ストレスからくる病気の予防につながる可能性があります。ストレスは、自律神経のバランスを乱し、免疫力をさげたり、内臓の働きを弱めたりすることで病気の原因となる場合があります。そのため、ストレスを軽減することは、結果として休業や離職、自殺といったリスクを軽減することにもつながります。
病気を発症するに至らない場合でも、心身の健康が悪化すると、集中力や判断力が低下しがちです。集中力や判断力の低下が事故や不祥事を起こす可能性を高め、場合によっては社会全体から非難されることにつながりかねないと考えると、大きなリスクとなり得ます。健康経営には、そうしたリスクを防ぐ効果も期待できるので、メリットは決して小さくはありません。
さらに、従業員が医療機関へかかる頻度が低くなると、企業が負担する医療費も減らせます。企業にとっては大きなメリットといって良いでしょう。
【企業側メリット③】企業イメージの向上
健康経営を実施することによって、従業員を大切にしている企業だというイメージが作られるということも、企業にとっては大きなメリットの1つでしょう。健康に働ける環境が整えられているということが社内外にアピールできるので、採用活動においても優秀な人材を集めやすくなります。
社会的な信頼度も高まるため、取引先との関係構築でもプラスに働くはずです。業績アップにつながるうえに、投資家からの投資対象としても選ばれやすくなるので、企業イメージはますます向上することになるでしょう。
【企業側メリット④】離職率の低下
転職が当たり前の時代になった今、従業員に企業への帰属意識を持ってもらうことが難しい状況にあります。そのため、社員への健康支援を通して会社へ愛着心を持ってもらうことで、離職率を低下させるといった大きなメリットとなり得ます。
例えば、「オフィスの環境整備や食生活のサポートを行うことで、身体的な健康状態の改善を促す」「仕事と生活とのバランスがとれた労働時間や福利厚生の充実で、精神的な健康状態の改善をする」などといった取り組みが考えられます。
このように、従業員の健康状態を配慮することによって、企業に対しての満足度向上が期待できます。さらに、満足度が向上すれば、自社に所属するすべての従業員が長くいきいきと働き続けられる環境がつくられるはずです。総じては、企業側だけでなく従業員にとっても大きなメリットとなることでしょう。
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【従業員側メリット①】健康状態の改善
健康経営を企業の方針として行うことで、従業員は自身の健康の大切さに気付き始めます。
実際、仕事に追われ、健康管理まで手が届かない従業員も少なくありません。しかし、体調を崩しがちだった社員や、今まで健康状態に関心がなかった社員にもアプローチできるようになります。企業側が個々の従業員に適切に配慮することで、健康に対する意識の変化や向上が見込まれるでしょう。
日々の健康管理に自覚を持って生活する社員が増えることは、企業側としても大きなメリットとなります。また、体力強化のための運動習慣を増やしたり、健康診断の数値を改善したりと努力をする従業員も増えてくるはずです。このように、継続的な健康経営は従業員の健康状態を改善し、その効果は目に見える形で感じられるようになります。
【従業員側メリット②】業務の効率化
健康状態が改善されると、従業員は業務にエネルギーを注げるようになります。自身のベストな状態でパフォーマンスが最大限に発揮できる環境があることは、従業員の円滑な業務遂行の一助となるに違いありません。一人一人が集中して取り組み、適切なプロセスを踏むことができれば、業務にかかる時間や費用を最小限に抑えることができるでしょう。
さらに、効率的に仕事をこなすことができた、という成功体験は従業員の自信にも繋がります。つまり、従業員の健康状態は企業の経営状況ときわめて相補的な関係であることは確かです。したがって、健康経営の根本的な考え方である従業員の健康増進は、結果として生産性向上に大きく寄与しているといえるでしょう。
【従業員側メリット③】モチベーションの向上
健康増進を重視した健康経営を行うことで、ストレスフリーに自分の仕事に集中できる環境が整備されていきます。それに伴い、従業員のモチベーション向上が期待できるでしょう。
従業員が自主的かつ前向きな姿勢で仕事に取り組み、高いパフォーマンスを発揮できるような体制作りをすることで、個々のポテンシャルを引き出し、業務効率を上げることが可能です。さらに、個人でのモチベーションが向上していくことで、チームとしての組織力が高まり、組織単位での生産性向上に大いに期待できます。
健康経営を成功に導くポイント
健康経営を始める場合、ただやみくもに導入しようとしても、なかなかうまくいくものではありません。会社全体で健康経営の効果を実感できるようにするためにも、きちんとポイントを押さえておきましょう。ここからは、成功に導くためのポイントを4点解説します。
経営陣の理解を得る
健康経営は、経営手法であり経営を行ううえでの概念です。そのため、健康経営を実施するためには、経営方針のひとつとして企業全体で取り組む必要があります。そして、導入を成功させるためには、経営陣の理解を得ることが非常に重要です。
経営陣は、利益につながることがわかりにくいと、なかなか新しい制度の導入は認めない傾向があります。健康経営の導入を認めてもらうためには、重要性を正しく理解してもらうことが欠かせません。健康経営を実施することで労働生産性がアップすることやリスクが軽減することなど、メリットをアピールしつつ、健康経営の目的を明確にすることが大切です。
あらかじめ健康経営の担当者もしくは専任者、専門部署などをしっかり据え、具体的に説明できるようにしておくと、理解を得やすくなります。
会社全体に健康経営の重要性を伝える
せっかく健康経営を実施しても、会社全体に健康経営の重要性が浸透しなければうまくいきません。具体的な取り組みを呼びかけても賛同が得られにくいからです。
賛同が得られないまま見切り発車で取り組みを進めても、健康に関心のある従業員だけが参加し、それ以外の従業員が参加しないといった事態を招く恐れがあります。それでは、コストを掛けるわりに、企業が負うリスクはほとんど変わらないという結果になりかねません。
まず、健康経営を推進する社内体制を構築するところから始めましょう。しっかり体制を整えたうえで、必要に応じて外部からアドバイザーを呼ぶといった工夫を行うことも大事です。会社全体で取り組み、重要性を共有できる環境にすることで、健康経営のスムーズな浸透が期待できます。
健康経営の取り組みをPRする
健康経営を実施していることが、社内外に知られていなければ意味がありません。取り組みが単なる福利厚生の一環と受け止められていたのでは、思ったような効果にはつながらない可能性もあります。
社内報や株式総会、プレスリリースなどを通じて、自社が健康経営に取り組むことをPRしましょう。企業のトップが経営理念に基づき、具体的な取り組みを社内外へPRすることによって、従業員や企業の周囲からの理解を得やすくなります。
PDCAサイクルを循環させる
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)という一連の行動を循環させることをPDCAサイクルといいます。PDCAサイクルが重要なのは、生産管理や品質管理など管理業務だけではありません。健康経営でもPDCAサイクルを循環させて、絶えず効果を検証していくことが求められます。
たとえば、健康診断やストレスチェックなど行ったら、課題を抽出し、課題に応じた取り組みを決定することが重要です。残業時間や休日出勤のデータ、有給休暇の消化率も課題を抽出するうえでは重要なヒントとなり得ます。
取り組みを行ううえでは、目標を設定して従業員へ通知することが不可欠です。実施後は効果を検証し、次の取り組みを計画する際の情報として役立てます。従業員が負担を感じる取り組みを計画したのでは、誰も実施したがりません。簡単で、楽しく取り組めるものを念頭に計画することが大切です。
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