OKAN WEB MAGAZINE

"働く人のライフスタイルを豊かにする!日本一"おせっかい"なOKANのウェブマガジン"

  • #ジョブ型雇用

働き方

コロナ禍で注目されるジョブ型雇用。仕組みやメリット・デメリットを解説

働き方

2020/11/20


新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、欧米諸国で主流のジョブ型雇用への関心が高まっています。労働人口の減少や、進むデジタル化・グローバル化への対応にも有効と言われる、ジョブ型雇用について解説します。

ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用とは、仕事(ジョブ)を軸に考え、職務記述書(ジョブディスクリプション)によって職務内容や給料などを明確にしたうえで、雇用契約を結ぶ仕組みのことを言います。欧米諸国で主流な雇用システムで、日本でも外資系企業を中心に取り入れられてきました。

最近では、経団連が2020年の春闘指針で終身雇用や年功序列などを特徴とする日本型雇用システムのあり方の見直しを訴え、ジョブ型雇用の導入を提言したことで、日系企業からも注目されはじめています。

参考:2020年版経労委報告を公表 (2020年1月23日 No.3439)

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違い

ジョブ型雇用は、日本で主流のメンバーシップ型雇用とどのような違いがあるのでしょうか。それぞれ詳しく解説していきます。

メンバーシップ型雇用

メンバーシップ型雇用は、「人に対して仕事を割り当てる」というのが特徴です。新卒一括採用をイメージしていただくと分かりやすいのではないでしょうか。

新卒者は入社したタイミングで配属先を知らされ、その後数年ごとのジョブローテーション(異動)によって幅広い職種に携わります。一つの専門性を追求していくというよりも、幅広い知識を身につけたゼネラリストを養成するのに適した仕組みと言えます。

長いスパンをかけて社員を育てることが前提であるため、企業にとって社員の早期離職はできるだけ避けたい課題です。そのため、年功による昇給・昇進の決定や、定年時の多額の退職金支給などに代表される、終身雇用の仕組みが存在します。

ジョブ型雇用

一方、ジョブ型雇用は、「仕事に対して人を割り当てる」というのが特徴です。中途採用のイメージと近いかもしれません。

一番の特徴は、その仕事の使命や役割、必要な能力・資格、誰に業務報告するかなどをまとめた職務記述書の用意があることです。

採用において重要視されるのは、年齢や勤続年数よりも、その人が持つスキルや成果です。また、採用の段階で配属先が決定していることが多く、入社後は同じ職務に長期間携わることができるため、専門性を高めるのに適した仕組みと言えます。

会社が育てるのではなく、自ら学び成長していく雇用システムとなるため、終身雇用という考え方には当てはまりません。

メンバーシップ型雇用 ジョブ型雇用
仕事内容・キャリア 総合的。

ジョブローテーションによって、幅広い職種を経験させることで、ゼネラリストとして育てる。

限定的。

自ら異動の希望を出さない限り、一つの職務に携わることができるため、専門性を高めていける。

契約 入社時に一度だけ。 入社時のほか、その後も仕事のグレード(職級)が上がるなど、職務記述書の内容に変更が出れば、都度行う。
給料 人で決定。

スキルよりも、社歴や年齢などを重視。

仕事内容で決定。

年齢や学歴に関係なく、スキルを重視。

昇給 年齢に応じて増える。 仕事内容または仕事のグレードが同じであれば増えない。
採用 新卒採用が中心。 必要に応じて募集。
異動・昇進 会社が決める。 社員が自ら応募・交渉。

ジョブ型雇用が注目される背景

近年、大手の日系企業を中心に導入が続いているジョブ型雇用ですが、この雇用システムが注目を集める背景には、昨今のさまざまな状況も関係しています。

1. 新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスによって、一気にテレワークが普及しました。しかし、従業員が離れて働く場合、勤務実態を把握しづらいため、仕事の分担をはっきりさせないと適正な評価がしにくいというデメリットがあります。職務内容や責任範囲が明確なジョブ型雇用であれば、成果が可視化しやすく、的確な評価を与えることができると考えられます。

またテレワークでは、出社を前提にした企業による勤務時間の管理下から離れ、社員が各自でタスクや時間を管理することが求められます。そのような環境においては、メンバーシップ型雇用による時間管理型の報酬制度よりも、ジョブ型雇用による成果型の方が適していると言えます。

さらに、コロナ禍で企業は消費や市場の変化への対応を迫られるとともに、社員も企業の成長戦略を考え、実行する能力が求められています。そのような背景から、成果型の制度である点をとらえて、ジョブ型雇用に関心を持つ企業が増えていると考えられます。

関連記事
企業存続のカギを握るテレワークの未来|活躍し続けられる組織をつくるシリーズVo.1

2. 正規と非正規の格差是正

2020年4月1日から全国の大企業で「同一労働同一賃金」のルールが施行されました(中小企業は2021年から)。これは、同じ仕事に従事する従業員は正規雇用・非正規雇用に関わらず、同一の賃金が支給されるべきという考え方です。

多くの日系企業が採用している「メンバーシップ型雇用」は仕事内容に関係なく、勤続年数によって給与が決まっていくため、仕事内容によって賃金が決定する同一労働同一賃金ルールと相反する要素が生じてしまいます。

つまり、同一労働同一賃金ルールの施行も、従来のメンバーシップ型雇用に課題を投げかけるかたちとなり、ジョブ型雇用への移行の後押しにつながっているのです。

関連記事
同一労働同一賃金の導入に向けて押さえておきたいポイントとは?

3. 国際競争力の強化

メンバーシップ型雇用は、求められる人材が総合職やゼネラリストとなること、また数年ごとに部署異動が行なわれることなどから、社員の専門性を高めることが難しい制度と言えます。それが結果的に生産性の問題にもなって表出しています。

日本と比べて生産性が高い国が多く並ぶ欧米諸国は、ジョブ型雇用によって、自ら異動の希望を出さない限り一つの職務に全うできる環境が整っています。また、ジョブ型雇用は特定分野の専門人材の厚みを増すことにもつながります。

グローバル企業との競争に、生産性の向上は不可欠です。これからますます激化する国際競争に勝ち残っていくために、専門性の高い集団をつくろうと、ジョブ型雇用に目を向ける企業が増えていると考えられます。

参考:日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2019」

4. 高度IT人材の不足

AIやIoTなどを柱とする第4次産業革命の到来に伴い、ITエンジニアやデータサイエンティストといった高度IT人材の需要がますます高まっています。

これまでは一部の企業だけに求められていた専門職ですが、今後は業界の垣根を越えてさらに多くの企業で必要不可欠な存在となると考えられます。

成果に応じた評価が可能なジョブ型雇用であれば、人材のスキルによって高額な報酬を提供することが可能になるため、有能な人材の獲得に向けた競争力が大きく向上すると期待されています。

5. 多様な人材の活躍促進

少子高齢化が進む日本で労働人口を確保していくためには、多様な人材を積極的に活用するダイバーシティ(多様性)の観点が欠かせません。

子どもを持って働く母親、親の介護と両立しながら働く人、何らかの支援が必要な障がいのある人、日本語での会話が難しい外国人などを有効に活用していくためには、それぞれの抱える事情に配慮し、さまざまな制約の中でも仕事への意欲を高め、能力を発揮できるような環境整備が必要となります。

そのためには、働く場所や労働時間にとらわれず、それぞれに適した職務に就くことができるジョブ型雇用の普及が重要となるでしょう。

関連記事
ダイバーシティはカテゴリーから個々の価値観へ。JTBグループ執行役員髙﨑邦子氏インタビュー

ジョブ型雇用のメリット・デメリット

ジョブ型雇用を導入した場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。企業側・求職者側に分けて、それぞれ解説していきます。

ジョブ型雇用のメリット

企業側

  • 専門性の高い人材を採用できる
    職務範囲を限定することで、より専門的な人材を獲得することができると考えられます。また、職務範囲が限定されているということは、欠員が出た際に最適な人材を確保しやすいという利点にもつながります。
  • より成果が出やすい環境になる
    ジョブ型雇用は、仕事を軸に考えた雇用システムのため、成果で評価をされる傾向が強いと言えます。自身の成果が評価につながるとなれば、全ての社員がより成果を上げるために仕事に取り組むと考えられます。

求職者側

  • 専門性を活かした仕事に就ける
    職務記述書によって提示された範囲内の仕事のみに従事することになるため、自身が特化したい分野だけを専門にして仕事をすることができます。また、ジョブローテーションの心配もないので、専門性を高めることにもつながります。
  • スキルに応じて給与が決まる
    年齢や学歴に関係なく、スキルを重視したジョブ型雇用では、その人が持つスキルが高度であればあるほど給与も高まる傾向にあります。そのため、スキル次第では20代でも40代の社員を超える給与を得ることが可能になるでしょう。また、昇進も年齢や勤続年数に関係なく、スキルによって検討されるため、若手の抜擢が起こりやすくなると考えられます。

ジョブ型雇用のデメリット

企業側

  • 社内の人員整理・配置換えの柔軟性が低い
    企業の方針転換や経済状況の変化などで、事業撤退に伴うポジションの廃止が発生した場合、日本では欧米のように簡単に従業員を解雇することはできません。また、ジョブ型雇用の場合は職務範囲や勤務地が限定されているため、急な欠員が出た際などに配置換えで柔軟に対応することも難しくなります。
  • 人材獲得競争が激化する
    スキルによって評価されるジョブ型雇用においては、人材が条件や待遇のよい企業に獲得される可能性が高くなります。また、個人のキャリア意識が高まることで、優秀な人材が流出するリスクも増大します。終身雇用にとらわれることもなくなれば、年齢に関わらず転職を考える人が増えるでしょう。ヘッドハンティングやスカウトなども、今後さらに激化すると考えられます。
  • 人材マネジメントの作業量が増加する
    これは、主に人事部にとって影響が大きいと考えられるデメリットです。ジョブ型雇用を導入すると、全社員分の職務記述書の作成と管理・更新が必須となります。口頭のみで書面化されていない条件や業務などがあると、トラブルにつながることもあるため、細心の注意が必要になります。また、そのうえで従業員を適切に評価するというプロセスも発生するため、人材マネジメントにパワーと時間がかかると考えられます。

求職者側

  • 自分自身でキャリア設計をしなければいけない
    即戦力を採用するジョブ型雇用では、会社が人材を育成する考えはありません。自分のキャリアは自分で切り開くことが求められるため、会社に頼らず、自律的にスキルアップすることができなければ、キャリアアップが難しくなります。自分自身でキャリア設計できなければ、年齢を重ねてもグレード(職級)が上がらず昇給もなし、最悪の場合は能力不足と判断され、給与が下がることもあり得ます。
  • 仕事を失うリスクがある
    ジョブ型雇用は、職務記述書に示された職務に従事することを基本とします。企業の方針転換や経済状況の変化などで、事業撤退に伴うポジションの廃止が発生した場合、契約終了になる可能性もあり得ます。

ジョブ型雇用を導入するためにすべきこと

実際にジョブ型雇用を導入する場合、どのような準備が必要になるのでしょうか。考えられる項目を挙げていきます。

1,職務の棚卸と職務記述書の作成

まず、社内で執り行っているすべての職務を洗い出す必要があります。その後、細分化された職務をもとに、それぞれの職務のレベル分けや給与設定などを行い、各ポジションの職務記述書を作成します。

なお、職務記述書には職務内容や給与、勤務地、勤務時間帯だけでなく、職務レベルに伴う権限や責任といった役割まで、明確に記載しておくことが望ましいとされています。

2,人事制度の改定

給与体系

メンバーシップ型雇用では、年功序列の考え方をもとに、従業員の年齢や勤続年数が給与に大きく影響を与えていました。しかし、ジョブ型雇用では、職務レベルとその成果が給与の判断基準となるため、給与体系の切り替えが必要となります。

評価制度

ジョブ型雇用において、最も重視される評価対象は「成果」となるでしょう。勤務態度なども評価対象に含まれていたような従来のメンバーシップ型雇用の評価制度から、大きく見直しが必要になると考えられます。

3,労働環境の整備

働き方

あくまで成果を重視するジョブ型雇用では、従業員一人ひとりがそれぞれのタスクや時間をしっかりと管理できていれば、働き方は自由に選択して問題ないという考え方が成り立ちます。そのため、メンバーシップ型雇用では必須とされていた定時時間内での出社勤務から、在宅やサテライトオフィスなどでのテレワーク勤務、フレックス制度の拡充など、働き方の選択肢を増やすことも必要となるでしょう。

ITインフラ

働き方の選択肢が増えることによって、会社に出社しなくても、スムーズに業務を遂行できる環境づくりも必要になります。そのためには、セキュリティ要件を担保したうえで、社外からも制限なく社内ツールにアクセスできるようなインフラ整備が欠かせません。

4,採用方法の見直し

新卒採用

ジョブ型雇用は職務を限定した採用になるため、これまで一般的だった新卒一括採用は、かたちを変える必要が出てくるでしょう。たとえば、ポテンシャル採用として求職者の適正に合うポジションに初級レベルから就業させたり、または欧米のように長期インターンシップの機会を増やして在学中から実務経験を積ませたりすることなどが考えられます。また、採用期間は新卒採用も通年が一般的となるでしょう。

中途採用

中途採用は、これまで以上に求職者のスキルや前職での成果を重視する必要があるでしょう。また、入社後に企業と求職者の間で認識のギャップが発生しないように、職務記述書の内容に関する合意形成も、入社承諾を得る前の段階でより慎重に行うことが求められます。

企業の状況に応じて柔軟な対応を

雇用規制の厳しい日本では、欧米のような厳密なジョブ型雇用を導入できる企業は限られます。各企業の状況に応じて、これまでの日本型雇用システムも残しながら、職種別採用を拡大したり、成果にウェイトを置いた評価方法に転換していったりと、うまくジョブ型を取り入れていくかたちを検討してみるのも、一つの案と言えるでしょう。

オウンドメディア「おかんの給湯室」の最新記事
働き方に関する最新トレンド
健康経営・福利厚生・従業員満足度向上に関するお役立ち情報
などが届くおかんの給湯室のメールマガジン配信中!

↓↓↓30秒で完了する登録フォームはこちら↓↓↓

Writer 執筆者

おかんの給湯室編集部

「おせっかいマガジン」登録フォームはこちら