OKAN WEB MAGAZINE

"働く人のライフスタイルを豊かにする!日本一"おせっかい"なOKANのウェブマガジン"

  • #働きやすさ
  • #働き方改革
  • #同一労働同一賃金
  • 働き方

2021年4月からの「同一労働同一賃金」中小企業が知っておきたい内容と対策を徹底解説

  • 働き方

2021年4月より「同一労働同一賃金の義務化」が中小企業にも適用されました。大企業への適用より一年の猶予があったとはいえ、簡単に切り替えることが難しい内容であり、いまだ対応が不十分な企業も見受けられます。

本記事では、「同一労働同一賃金」の概要やポイント、企業としての対応について解説します。ご参考の上、自社の対応に生かしてみてください。

同一労働同一賃金とは?

同一労働同一賃金は、パートタイム・有期雇用労働法や労働者派遣法で定められた制度のひとつです。職務内容が同様の従業員であるならば、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) 非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)を問わず、同一の賃金を支払うという考え方です。

この法案は、正規・非正規の従業員間の待遇差を解消し、さまざまな働き方を選択できる社会を目指すものです。法案名は「パートタイム・有期雇用労働法」が正式名称です。

義務化の適用時期

改正働き方改革関連法が国会で成立したのは2018年6月29日です。同一労働同一賃金の義務化が施行されたのは2020年4月1日からですが、中小企業へは一年猶予が認められ、2021年4月1日から適用されています。

大企業と中小企業の定義

中小企業基本法で定義されている中小企業の定義は、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する従業員数(事業場単位ではなく、企業単位)」で区別されます。

中小企業の定義

業種 中小企業基本法の定義
製造業、建設業、運輸業その他 資本金 / 出資総額が3億円以下の会社
または
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 資本金 / 出資総額が1億円以下の会社
または
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
サービス業 資本金 / 出資総額が5千万円以下の会社
または
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
小売業 資本金 / 出資総額が5千万円以下の会社
または
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

基本的には、「資本金または出資総額」が3億円以下、または「従業員数」が300人以下の場合、中小企業と判断されます。大企業については法律で定められた基準はなく、中小企業以外とされています。そのため、中小企業の定義を裏返した以下の表のようになります。

大企業の定義(法律上の基準はない)

業種
製造業、建設業、運輸業その他 資本金 / 出資総額が3億円以上の会社
かつ
常時使用する従業員の数が300人以上の会社及び個人
卸売業 資本金 / 出資総額が1億円以上の会社
かつ
常時使用する従業員の数が100人以上の会社及び個人
サービス業 資本金 / 出資総額が5千万円以上の会社
かつ
常時使用する従業員の数が50人以上の会社及び個人
小売業 資本金 / 出資総額が5千万円以上の会社
かつ
常時使用する従業員の数が100人以上の会社及び個人

小売業、サービス業、卸売業は基準額・基準労働者数が異なるため注意しましょう。また、「従業員数」には臨時雇用や臨時欠員は含まれませんが、アルバイトなど有期雇用であっても、臨時的に雇い入れられた場合ではなければ数に含まなければなりません。

適用対象となる従業員の雇用形態

同一労働同一賃金で対象となる雇用形態は、以下の3つです。

・パートタイム労働者
・有期雇用労働者(雇用期間があらかじめ定められている非正規雇用労働者)
・派遣労働者

正社員同士や正社員・無期雇用フルタイム労働者間での待遇格差は、同一労働同一賃金の対象とはなりません。

対応しない場合に罰則はあるか?

同一労働同一賃金の実現のために整備を行うことは、企業側の義務ではあります。ですが、現時点では同制度を企業に強制したり、対応しないことへの罰則が設けられたりなどはされていません。

しかし対応を怠った状態で事業を続けた場合、労働者から訴訟を起こされる可能性があります。裁判で違法性が認められると、差分の賃金や手当を支払う必要もある上、レピュテーションリスクも発生します。トラブル防止のために、しっかりと対応しておかなければならないでしょう。

同一労働同一賃金の改正ポイント

同一労働同一賃金では、どのような点が従来と変わったのでしょうか。ポイントを整理し説明します。

不合理な待遇差の禁止

同一労働同一賃金の考え方では、企業への貢献度や経験、能力などが正社員と非正規雇用労働者で同じ場合に、待遇差を設けることを禁止されています。

派遣労働者への待遇も同じく、正社員と派遣労働者が同一の能力や経験を持つのであれば、派遣先は同じ待遇を用意しなければなりません。

待遇差が不合理であるかどうかを判断する基準は、新しく「パートタイム・有期雇用労働法」に整備された「均衡待遇規定」と「均等待遇規定」です。

「均衡待遇」と「均等待遇」はよく似た言葉ですが、中身は大きく異なります。

均衡待遇規定

「均衡待遇規定」とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇に違いがある場合に、その違いに応じて合理的な格差が求められることです。

・職務内容(業務内容・業務に伴う責任の程度)
・当該職務の内容および配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)
・その他の事情の内容

の3点を考慮した上で待遇を決定しなければなりません。

たとえば、均衡待遇における賃金や手当、教育機会への考え方は以下のとおりです。

基本給は、労働者の能力や経験、業績または成果に応じて支払うものもあれば、勤続年数に応じて支払うものもあり、それぞれの企業の趣旨・性格に合わせて支給されています。雇用形態にかかわらず、その実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければなりません。昇給が、勤続年数の増加に応じて行われるのであれば、これについても同様です。

会社の業績等に応じて賞与を支給したり、役職の内容に応じて役職手当を支給したりするのであれば、同一であれば同一の、違いがあれば違いに応じた支給が必要です。

また、職務に必要な技能・知識を習得するために教育訓練や研修が実施されるのであれば、雇用形態問わず、職務内容に応じた実施を行う必要があります。

均等待遇規定

「均等待遇規定」とは、

・職務内容(業務内容・業務に伴う責任の程度)
・該当する職務の内容および配置の変更の範囲(人材活用の仕組み)

の2点が同じである場合には、正規雇用労働者と比較した非正規雇用労働者の待遇の差別的な取扱いを禁止するというものです。

ただし、上記2点が異なる場合であったとしても、同一の支給を行わなければならない待遇があります。

主なものとして、下記のような例が挙げられます。

【各種手当】
特殊作業手当、特殊勤務手当、時間外労働手当の割増率、深夜・休日労働手当の割増率、通勤手当・出張旅費、食事手当、単身赴任手当、地域手当(特定の地域で働く労働者に対する補償として支給するもの)等

【福利厚生】
福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室等)の利用、転勤者用社宅(転勤の有無等の要件が同一の場合)、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障、病気休職、法定外の有給休暇、その他の休暇等

待遇差の説明義務

労働者の待遇に関する説明義務は、これまでは規定されてない部分もありました。特に、非正規雇用労働者と正規雇用労働者との「待遇差の内容・理由」は、パート従業員や派遣従業員が求めても、応じる義務は企業側にはありませんでした。

改正後は、「待遇差の内容・理由」を非正規雇用労働者に求められた場合はもちろん、雇入時に「雇用管理上の措置の内容」の説明をする義務や、求められた時に「待遇決定に際しての考慮事項」を説明する義務もが企業側に課せられました。これらの説明義務は、求める側がパート従業員、有期雇用労働者、派遣労働者のいずれの場合でも適用されます。

企業は、従業員から説明を求められた際には、具体的な説明を行うことが義務づけられています。比較対象の社員を選定し、書面を使いながら口頭で説明を行うなど工夫が必要となるでしょう。

なお、待遇差の説明を求められたことを理由に、従業員の解雇や減給などの不利益を従業員に課すことは禁止されています。

行政ADR規定の整備

行政ADRとは、事業主と従業員の間の紛争を、裁判所ではなく行政が第三者として関与し、解決を目指す手続きを指します。働き方改革関連法により、「均衡待遇」「待遇差の内容、待遇差が生じる理由に関する説明」も行政ADRの対象となりました。

行政ADRで間に入るのは、全国の都道府県労働局など、独立した行政委員会や行政機関です。無料で利用でき、解決までの手続きは全て非公開で行われます。裁判と比較すると手続きが迅速に進められるので、トラブルの早期解決を見込めます。

「待遇差」の改善を求められる要素

「同一労働同一賃金」の考え方の中で改善すべき待遇差とは、基本給などの賃金についてのみを指すものではありません。各種手当、教育訓練や福利厚生についても、不合理な待遇差が禁止されています。

たとえば、対応が必要とされる福利厚生の待遇差は、下記のようなものです。

・福利厚生施設(食堂、休憩室および更衣室)の使用
・転勤者用社宅
・慶弔休暇/健康診断に伴う勤務免除と有給保障
・病気休職
・有給休暇および法定外休暇(慶弔休暇を除く)の取得

上記のような福利厚生は、法律上導入が義務付けられていない「法定外福利厚生」です。
しかし、同一労働同一賃金においては、福利厚生の種類に関わらず同じ待遇が求められます。現時点で、正社員と非正規労働者間で提供されている福利厚生に差がある場合、すみやかに改善を行う必要があるでしょう。

同一労働同一賃金が施行された背景

同一労働同一賃金が施行された背景にあるのが、「非正規雇用労働者の増加」そして「賃金格差」です。

非正規雇用労働者は、数・割合ともに年々増加傾向にあります。総務省統計局によると、労働者のうち非正規雇用労働者の割合は1984年の15.3%から2019年には38.3%と2倍以上に増加する一方で、正規雇用労働者の数は大きな変動はありません。労働市場全体の人数の増加がありながら、非正規雇用労働者だけが増加しているといえます。

さらに、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間には賃金格差があります。国税庁の2019年民間給与実態統計調査では、正規雇用平均給与の503万円に対し、非正規雇用が175万円となっており、平均給与差は328万円と大きな差があることがわかります。

非正規雇用労働者は雇用者全体のおよそ4割を占める重要な役割であるにもかかわらず、立場的にも経済的にも不安定です。仕事や責任が正社員と同程度であったとしても、雇用形態が違うというだけで賃金などの待遇差があることも多いでしょう。

そのような背景があり、同一企業内における正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇の差をなくせるよう、働き方改革関連法が2018年7月に公布されました。同法による「パートタイム・有期雇用労働法(現在のパートタイム労働法)」が2020年から施行され、これにより同一労働同一賃金の義務化が実現しました。

国が「同一労働同一賃金」を推し進めることで、雇用形態を理由とした格差の是正・解消が期待されます。多様な就業形態で働く人々が能力を有効に発揮し、その働きや貢献に応じた待遇を得られる「公正な待遇の実現」が望まれます。

同一労働同一賃金によるメリットやデメリットは?

従業員にとって、同一労働同一賃金は大きなメリットがあるように思われますが、企業にとってはどうでしょうか。メリット、デメリットをそれぞれ説明します。

メリット

同一労働同一賃金は、従業員にとってのメリットが目立っているかもしれません。しかし、中長期的に考えれば、企業にも良い影響をもたらすメリットがあります。

従業員のモチベーションアップにつながり、業績向上が期待できる

同一労働同一賃金によって労働条件が改善されることは、非正規雇用労働者にとっては「頑張れば報われる」と感じられるものです。正社員と同じ業務内容であれば、昇給のチャンスを得られる可能性も。雇用状態にかかわらず、昇給などの仕事のモチベーションアップになるきっかけは重要です。

またガイドライン上では、教育訓練の機会を同一にすることも求められています。したがって、非正規雇用労働者にも訓練や研修などスキルアップの機会を提供することで、従業員の業務効率アップや技術の向上が期待できるでしょう。

人材不足を解消できる

少子高齢化が加速し労働者人口が減少している状況下で、多くの企業が深刻な人手不足に苦しんでいます。しかしさまざまな事情で正社員として働けず、納得のいかない待遇ながらも、やむなく非正規雇用労働者として勤務する人も多い状況です。

同一労働同一賃金を導入することで、非正規雇用労働者であっても納得のいく待遇を受けながら働くことができます。ライフステージや事情に合わせ、パートタイム勤務や派遣社員など、さまざまな雇用形態で働き続けられます。

働きながら十分な待遇を受けられることで従業員の満足度が高まれば、離職率の低下が見込めます。さらに、そのような環境が整備されていることは求職者にとっても魅力的に映り、採用活動にも役立つかもしれません。

デメリット

一方で、同一労働同一賃金は企業にとってメリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、具体的なデメリットを紹介していきます。

経営状況が圧迫される可能性がある

同一労働同一賃金の導入において、基本的には、非正規雇用労働者の賃金アップで格差是正に取り組むことを良しとしています。

しかし、非正規雇用労働者の待遇を改善した結果、人件費が高騰することが予測されます。また、賃金や各種手当だけではなく福利厚生や教育機会などの機会も平等に提供するため、費用負担の大幅な増加も考えられます。非正規雇用労働者を多く雇用している企業は、従来よりも経営状況が悪化する可能性も捨てきれません。

また、派遣労働者は派遣先に合わせた待遇が求められます。もし、派遣先が大企業で、派遣元が中小企業である場合、派遣元の経営状況を圧迫しかねません。自社の状況をよく確認しておく必要があるでしょう。

非正社員間で賃金格差が広がる

同一労働同一賃金においては、取り組む職務によって賃金が決定されます。非正規雇用従業員の間でも、業界や企業、業務内容によって賃金格差が広がる可能性があります。正社員と非正規雇用の間の待遇差を埋め、格差を是正するための制度でありながら、新たに「業界間」「職業間」での賃金格差が広がる懸念もあります。

同一労働同一賃金の実現のために企業が行うべきこと

同一労働同一賃金を実施する場合、まず企業はどのようなことを検討すべきでしょうか。まず初めに行うべきことを紹介します。

正社員と非正社員の職務内容を明確にする

まずは、正社員と非正社員の職務内容を整理し、明確にしましょう。待遇差がある場合はそれを可視化し、規定に基づいて待遇を再設定した上で、すべての従業員に対して共有する必要があります。職務内容や求められる能力を考慮しながら、バランスのよい、公正な賃金体系を作っていきましょう。

人件費を算出し、調整する

職務内容を整理し、非正規雇用労働者と正社員の間での待遇を同一にする部分が洗い出せたら、実際にどのくらいの人件費になるのかを算出しましょう。人件費が予算内に収まらない場合は、調整を検討しなければなりません。

調整する方法としては、まず人員調整があります。通常、企業が人員調整をおこなう場合、非正規雇用労働者から調整を検討する傾向にあります。ですが、それでは同一労働同一賃金の考えに反してしまい、本末転倒です。生産性や効率性を考慮し、正社員を含めた上で人員調整を検討しなければなりません。

正社員の待遇を下げることで待遇を均等・均衡化することもひとつの方法ですが、「同一労働同一賃金ガイドライン」上では望ましくない方法とされています。しかし、労使間で合意がとれるのであれば法令違反ではありません。そのほか、賞与や福利厚生、各種手当、法律で支給が義務づけられていない福利厚生や制度を廃止することで予算に余裕を作ることなどが考えられます。

しかし、いずれの方法を選択したとしても、従業員にとっては待遇が悪くなったと捉えられ、モチベーションが下がり不信感を招きかねません。企業側としては悩ましいところですが、慎重に調整を行いましょう。

企業は雇用関係に関わらず働きやすい職場を整備していく義務がある

就業規則や賃金規定を見直していくことは簡単なことではありません。しかし、従業員と向き合い話し合いながら、あらゆる雇用形態の従業員が活躍できる待遇を整備していく必要があります。

十分に検討を行い、待遇の改善を実施する際には予算とのバランスを取りながら慎重に実施していきましょう。

執筆者 Writer

おかんの給湯室編集部

メルマガ登録はこちら

週に1度!最新情報をまとめてお届け! 働き方に関するトレンドや、健康経営や従業員満足度向上などの情報などの厳選記事をお送りします